解決志向アプローチの技法

コンプリメント

 

 コンプリメントとは「ほめる・賞賛する」(complement)という意味です。それだけではなく、感謝すること、敬意を表すこと、ねぎらうこと、感嘆することもコンプリメントにあたります。コンプリメントは、具体的な一つ一つの言葉や行動ですので技法としてとらえることができます。しかし、その側面だけではなく態度や姿勢という側面も大きいのです。クライエントがリソースフルな存在であることを信頼し、リソースを発見した時の驚きと喜びと感謝をクライエントに伝えることがコンプリメントです。

 

 

ミラクルクエスチョン

 

 解決像を構築するために使われる質問です。カウンセリングの早い段階で使われることが多いようです。典型的な質問の言い方は、次の通りです。「あなたが眠っている間に奇跡が起こり、あなたを悩ませていることがすっかり解決してしまっています。目が覚めたときは、どんなふうに目が覚めるでしょうか?」と投げかけます。目が覚めてからの1日を、視覚、聴覚など五感をフルに使ってリアルに思い描くことが重要です。さらに、「どんなことから、すっかり解決してしまったんだと気づくでしょうか?」とか、「家族は、あなたのどんな様子から、解決しているんだとわかるでしょうか?」などという質問を重ねて、解決像をより具体的にしていくこともひとつの方法です。

 ミラクルクエスチョンは、解決志向アプローチの技法の中では、比較的使いづらい質問技法だと言われています。非現実的であったり、唐突な感じを与える質問だからです。「すごく変わった質問をしてみたいのですが」などと前置きをしてから質問することも一つの工夫です。また、この質問は聞かれてすぐに答えられないことも多い質問です。クライエントからすぐに反応が得られなくても、カウンセラーから「自由に想像して下さい」などと粘り強く働きかけることも大切です。

ミラクルクエスチョンについては次の記事もご参照ください

「ミラクルクエスチョンを活用する」

 

スケーリングクエスチョン

 

 解決像が構築できた段階で使われることが多い質問技法です。小さな差位に目を向け、小さな変化が生じることを促すために使われます。また、変化については、クライエントが「ちょっと良くなった」などと曖昧に表現しがちなのですが、それを具体的にするという意味もあります。

 典型的な質問の言い方は、「最高に良い時を10点として、最悪を1点としたら、今は、何点ぐらいですか?」と投げかけます。ほとんどの場合クライエントは、あまり戸惑ったりせずに「大体、4点ぐらいだと思います」などと答えてくれます。そこで、さらに「それでは、その4点という点数ですが、4点の理由について教えて下さい。」などと、今できていることを具体的に聞いていきます。そして、「もし、今よりも、1点だけ上がったとしたら、どんなふうに良いことが起きそう?」などと、小さな変化に目を向ける質問をします。

 質問のバリエーションとしては、「10点は最高だけど、まあまあOKかなぁって思える点数って何点ですか?」、「ここ2週間ぐらいで、一番点数の良かった時は、何点ぐらいの点数でしたか?」などという質問もよく使われます。なお、「1点上げるためには何をすれば良いですか?」とはあまり質問しません。義務や必要のレベルの考え方に誘導してしまいがちだからです。

 

コーピングクエスチョン

 

 例外が見つけられない場合やスケーリングクエスチョンで0点だった場合に使われる質問技法です。典型的な質問の言い方としては、「どんなふうにして、今のこの大変な状況をなんとか乗り切っているんですか?」、あるいは「0点という最悪の状況でも、どんなふうにして自分を支えているんですか?」などという質問です。最悪の状況であってもクライエント自身にはリソースがあるということに気づき、そこに目を向けてもらうための質問です。クライエント自身がリソースフルな存在であるという信頼が基盤となっています。

 この質問によって、多くのクライエントは、自分が努力したり工夫したりしていることに気づき、それを話してくれます。しかし、「まったく乗り切ってなんかいないですよ」「自分を支えてなんかいないんです」などと答えてくるクライエントもいます。その場合でも「自分では乗り切っていなくても、自然に乗り切ってこれている部分があるんでしょうか?」などと、クライエントがもともとリソースフルな存在であることを示唆する質問を重ねることもできます。

 

例外に目を向け活用する技法

 「例外」は、解決に近づいていくためには、非常に重要です。クライエントが語るストーリーの中に、自然に例外についてのエピソードが含まれていることも多くあります。一方、なかなか「例外」と思えるエピソードを発見できない場合もあります。そういった場合には、まず例外を発見するためにクライエントに質問してみることがひとつの方法です。例えば、「少しでもましなときは、どんなときですか?」と率直に聞いてみることも一つの聞き方です。また、逆説的に「もういつでも問題ばっかりで、良いことなんて全くかけらないんですね」などと投げかけてみることもあるかもしれません。

 そして、例外が発見できた場合には、必ずコンプリメントを返すことが大切です。実際は、意識的にコンプリメントしようとするよりも、むしろ、自然とコンプリメントしてしまうことの方が多いかもしれません。さらには、例外がなぜ生じたかということや、例外の時にはどんなふうに過ごしているのかを具体的にしていくことが大切です。例えば、「どんなふうにして、そんなすごいことができたんですか?」とか「上手くいった時って、どんなふうにやってるんでしょう?」などと質問を重ねることができます。

 

 

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