スクールカウンセラーの存在も、一般的に広く知られるようになりました。反面、具体的な活動や活用方法はよく知られていません。ここでスクールカウンセラーのことを詳しく紹介していきたいと思います。
スクールカウンセラーは、子どもの心理に関連する事柄について、カウンセリングや心理学の専門性を活かして子どもの心の成長や発達を促していく教育や支援を行う役割を持った学校で働く専門職です。
スクールカウンセラーは学校では非常勤ですので、毎日学校にいるわけではありません。週に1回の活動が多いと思われますが、隔週とか月に1回という場合もあります。統計情報を見ると、スクールカウンセラーは、小学校では58.7%、中学校では91.8%、高等学校では78.8%の学校に配置されています。しかし、週に4時間以上となる配置は、小学校では14.2%、中学校では62.8%、高等学校では32.3%となっています(平成26年度学校保健調査)。この調査結果をまとめてみると次のような表になります。
小学校 | 中学校 | 高校 | |
スクールカウンセラーがいない | 41.3% | 8.2% | 21.2% |
スクールカウンセラーは週4時間未満 | 44.5% | 29.0% | 46.5% |
スクールカウンセラーは週4時間以上 | 14.2% | 62.8% | 32.3% |
この調査は平成26年度のものですので、それよりもスクールカウンセラーの配置は増えてきていると思われます。
スクールカウンセラーの役割は、概ね以下の5種類に分けられます。
子どもへの支援の内容はどうでしょうか?
保護者への支援の内容はどうでしょうか?
上記の子どもへの支援と内容的には重なります。保護者の皆さんとは、家庭での子どもへの関わり方や声のかけ方について一緒に考えて行くことが大半です。また、学校や担任の先生への要望や情報提供の方法についても相談していくことが多いです。
スクールカウンセラーは、不登校などの児童生徒の問題行動等への対応として、1995年から学校への配置が始まりました。当時は 「スクールカウンセラー活用調査研究」委託事業としての配置でした。つまり、調査研究であって、上手くいかなければ、すぐにもスクールカウンセラー事業はなくなってしまうという位置づけでした。
初年度の1995年には全国では154校への配置、つまり、各都道府県に数校程度の配置でした。その活用調査研究を通して、スクールカウンセラーがあるていどの役割を果たしたと認められたのだと思われますが、1998年の中央教育審議会答申では、「すべての子どもがスクールカウンセラーに相談できる機会を設けていくことが望ましい」と述べられています。そして、それを受けてスクールカウンセラーの配置は増えていきました。例えば、2000年には全国で2250校(初年度の14.6倍)に配置されています。
さらに、2001年からは国による補助事業という位置づけに変わり「スクールカウンセラー等活用事業」となりました。そして、中学校を中心として各学校への配置が進められいきました。2001年には配置校数は全国で4406校になりました。また、2007年には、公立中学校全校分に相当する約1万校の配置が可能となるよう予算が措置された。こんなふうに、公立中学校を中心として、全ての中学校にスクールカウンセラーが配置される体制が整えられてきたのです。
そして、文部科学省による教育振興基本計画(2008年)では、「いじめ,暴力行為,不登校,少年非行,自殺等に対する取組の推進」として、「教育相談を必要とするすべての小・中学生が適切な教育相談等を受けることができるよう,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の活用など教育相談体制の整備を支援する」とされました。さらに、2015年の中央教育審議会答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」では、チーム学校の一員としてしっかりした位置づけをしていくことを提言しています。スクールカウンセラーについての提言は次の3点にまとめられています。
こんなふうにスクールカウンセラーは20年を超える歴史があり、学校教育の中で重要性や必要性が認識されて、配置が広がってきました。今後はさらに学校の標準的な職としてしっかりとした位置づけが行われることも検討されているのです。
「スクールカウンセラーのしごと」として三重大学非常勤職員の大原紀江さんがスクールカウンセラーの活動の実際を紹介しています(NHKの解説委員室)。大変分かりやすい記事なので、紹介します。
私の仕事の内容です。私は今4つの小学校を週に1回まわっています。朝、職員室に出勤すると机の上に今日の予定表が置いてあります。その予定表に従って、漢字が覚えられない、割り算がわからないなど気になる子が受けている授業の様子を見に行ってどうして授業についていけないのか、どうサポートしていくか、先生や保護者と面談したりします。またコミュニケーションをとったり、子どもたちの様子を見るために、一緒に給食を食べたりお掃除をしたりするのも大切な仕事です。
二つ目の例は、小学校高学年の男の子です。こだわりが強く、切り替えが苦手な子でした。ここでいう切り替えの弱さとは、例えば、読書はやめて体育の着替えをしましょうと言っても、なかなか本を読み終えないとかです。無理やり読書を終わらそうとすると、大声で奇声を発したり、興奮状態になって周りはたいへんでした。私はこの子は一日の見通しさえきっちりつけば落ち着くのではないかと考えました。そこで先生に予め1日の予定を絵に描いたりして、目で見て予定が一目瞭然になるように伝えるよう助言しました。さらに、もしパニックになったときでもクールダウンする方法、例えば教室を出て、トイレの個室にかけこんだらいいんだよとかのアドバイスをしたところ、切り替えが上手になり、パニックもおさまりました。
これらはほんの一例ですが、その子の性格の特性や、得意・不得意なところを把握しカスタムメイドの関わり方を考案するのがスクールカウンセラーの最も腕の見せ所です。うまくツボにはまると、その子ができることが増えるので、生活がしやすくなり、自信がつきます。これこそ“自己肯定感”といわれるもので、この自己肯定感を育てることこそどんな薬よりも有効です。
スクールカウンセラーについての各県、各学校での配置の状況や、もっと詳しい活動の実際について知りたい方は、「平成26年度スクールカウンセラー等活用事業 実践活動事例集」をみてみると良いと思います。文部科学省の初等中等教育局児童生徒課が平成27年12月18日に発行したもので、各県ごとに数字的な内容や実際の事例の概要について報告されています。