LINEを使った相談活動にたくさんの相談がよせられたそうです。朝日新聞の10月12日の記事で報道されていました。「長野県教育委員会が9月、通信アプリ「LINE」を使って中高生の悩み相談を受け付けたところ、2週間で1579件のアクセスがあり、このうち547件の相談に乗れたことが分かった。県教委が10日、発表した。2016年度の1年間に電話で寄せられた相談は計259件で、LINEの方がはるかに多かった。県教委は「気軽に相談できる効果が大きい」とみて本格導入を検討する。」私は新聞報道以上の情報は知らないのですが、本当に意味のある試みだと思いました。
私自身も、SNSやチャットを使った相談には、非常に期待しています。相談しやすい仕組みとしても意味があると思いますし、それだけではなく、相談の質を向上させることも期待できると思います。
例えば、複数で相談を受けることは、チャットの場合は簡単なことだと思います。相談員が2名で組んで、横に並んで打ち合わせしながら、子どもの相談に応えたらどうでしょうか? きっと、相談員がひとりでチャットの相談に応えるよりもずっと良い相談活動をできると思います。
実際のカウンセリングでも、家族療法にルーツを持つアプローチでは、カウンセリングルームにマイクとワンウェイミラーがあって、隣の部屋からカウンセリングの様子を数人のスタッフがチーム(リフレクティングチーム)として観察して、それを相談に活かすという方法があります。カウンセラーが休み時間を取って、リフレクティングチームに意見を聞きにいったり、リフレクティングチームからインターホンでカウンセラーに指示が来たりします。もちろん、この設定は来談者(クライエント)に説明した上で了解をもらって活動しています。SNSでの相談は、それを特別な施設を準備しなくても実現することができるのです。
また、相談員が複数でひとりの相談チャットに応じるだけではなく、同時にAIがチャットに参加していて相談を行ったらどうでしょうか? 例えば、相談員2名、AI1名(?)での計3名で相談を受けるのです。AIが応えることは、人間には出せない反応やAIだから許される反応をすることが期待できると思います。万一AIが良くない反応をしたとしても、人間の相談員がそれをフォローすることができます。このチームは非常に意味のある支援をできるのではないかと期待してしまいます。余談ですが、AIカウンセリングについては、以前にブログ記事を書きましたが、可能性があると私は思っています。まだ実用性はないと思いますが人間と組めば良い働きをすると思います。
また、もしできればチャットをしながら話をしても良いと相談者が感じたら、音声通話での相談にそのまま移行できる仕組みを導入してはどうでしょうか? 始めから音声通話で相談する仕組みよりも、相談者の抵抗が少ないのではないかと思います。相談者の画面に電話のアイコンがあって、それをタップするとそのまま今チャットで相談している相手と音声で話ができるようにするのです。相談員のうちの1名が話をして、もうひとりが相談者と相談員の話を聞きながらチャットで参加するというスタイルも面白いかもしれません。
音声通話での相談に移行できるようにするのは、文字でやりとりするよりも、声でやりとりすることが相談者にとってプラスになることが多いと考えられるからです。一つは自分で声を出すということが、自分の心が自然に動いていくことにつながるからです。いわゆるカタルシス効果して言われていることですが、文字を書くよりも、声を出す方がその効果が働くと考えられます。文字を書くよりも、声を出す方が、より原始的な活動ですので、生き物として元々持っている自然治癒力が働くきっかけとなると考えられます。また、文字で働きかけられるよりも声で働きかけられる方が、サポートされているという感覚を生じさせやすいと思われます。だからこそ、チャットから音声通話に切り替えられる仕組みを導入するべきだと思います。チャット相談という抵抗の少ない入り口から、音声通話という効果の高い方法へスムーズに移行できるすばらしい仕組みになると思います。
SNSやチャットを使った相談活動は、始まったばかりですので、これからの発展が大いに期待できると思います。関係者の方にはぜひ、子どもたちの利益のために、力や知恵を集めて活動を発展させていってほしいと思っています。