小学校や中学校では、各学期に1回は参観日が設けられていて、授業中のお子様の様子を見る機会があると思います。最近では、参観日以外にも、「学校公開日」などとして、学校や授業の様子を見学に来て良い日を設けられていると思います。保護者の皆様は、授業中のお子様の様子を見るだけではなくて、お子様や他の子どもたちが描いた絵や作文などの作品も見てこられると思います。
〇学期の目標
多くの小中学校では、教室の後ろの壁や掲示板に子どもたち一人一人が書いた「〇学期の目標」が掲示されていることと思います。
私が良く見かけるのは、「生活面」と「学習面」の2つについて目標がかかれているものです。
子どもたちが書いている目標の中で、よく見かけるものを思い出すまま、リストアップしてみたいと思います。
生活面
- (~の)勉強を頑張りたい
- 忘れ物をしない
- 欠席(遅刻)をしない
- 友達とけんかをしない
- 悪口を言わないようにしたい
- 叱られるようなことをしない
- 友達と仲良くしたい
などなどです。
学期の初めに目標を立てるのは大切なことですが、こういった目標を立てているのを見かけると、本当にもったいないなぁと思います。上にあげたような目標は、それが良い変化につながりにくい目標だからです。
解決志向アプローチの「良い解決像」
ここで、短期療法(ブリーフセラピー)というカウンセリングの理論の一つである「解決志向アプローチ」の考え方を紹介します。解決志向アプローチは、問題や悩みに焦点を当てるのではなく、なりたい姿や快適な状態を直接的に目指して進んでいくアプローチす。
その中で、極めて大切なことが、「良い解決像」を持つということです。「良い解決像」とは、「良いゴール」や「良い目標」だと考えていただいて構いません。
では、「良い解決像」「良い目標」とはどんな目標でしょうか? それは、必然的進行と呼ばれている目標です。「(当然)~している」という形で言葉となっている目標です。
反対に、悪い目標は、漠然としていて具体的でない、否定形であるなどの特徴があります。また、「~したい」という目標もあまり良い目標ではありません。言外に「でも難しい」というニュアンスが含まれていて、もうすでに半ばあきらめている雰囲気が漂っています。
上で上げた目標の例は、どれも、こうったよくない目標に当てはまっています。目標をせっかく立てても、成長や良い変化につながりにくいと思われます。
「(~の)勉強を頑張りたい」という目標は、頑張りたい内容や方法をもっと具体的にすることができますし、「頑張りたい」というのは、願望で終わっています。また、「忘れ物をしない」という目標は、「~ない」という否定形です。「叱られるようなことをしない」という目標も漠然としていますし、否定形の言葉になっています。
もう少し、表現方法を工夫してよい目標を立てるようにしたら良いのではないかと感じます。
良い目標の立て方
良い目標は、否定形ではなく、「~する」と肯定して言い切る形になっている目標です。具体的であることも大切です。
ここではさらに、もう一工夫して、「~して、~する(なる)」という目標を立てるようにすることをお勧めします。
「~して」という前半部分では、手段や方法を具体的にすると良いと思います。また、「~する(なる)」という後半部分があることで、行動を維持することにつながります。ところで、100M走でゴールのテープを目標に走っていると、ゴールの手前で失速しがちであることが知られています。テープの先の地点を本当のゴールだと思って駆け抜けると失速しないと言われています。それとおなじで、「~する(なる)」という後半部分があるため、前半の「~して」ということを続けることにつながってきます。
具体例を通して考えます。「友達とけんかをしない」という目標を良い目標に変えてみると、「毎朝元気にあいさつをして、友達と仲良くする」とか「悪いと思ったらゴメンねとすぐに謝って、早めに仲直りする」などとなります。
子どもたちが自分だけで、こうった良い目標を立てることは難しい場合も多いと思います。目標の立て方を教えたり、大人が手伝ったりして、良い目標が建てられるようにサポートすることが必要だと思います。
解決志向アプローチについては、こちらもご参照ください
解決志向アプローチの哲学や理論について解説しています。
解決志向アプローチの具体的な質問技法を紹介しています。
会話の中で解決志向アプローチの技法をどんなふうに使っていくか、
具体的に紹介しています。