心の悩みや辛い気持ちで困ったときには、カウンセラーに相談してみようと考える人が多くなってきました。心理カウンセラーという仕事や言葉も、広く聞かれるようになってきたと思います。
この記事では、どんな資格を持ったカウンセラーに相談したら良いかについて解説します。
カウンセラーは誰でも名乗ることができる
私は、いくつかの心理の資格を持ち、カウンセラーとして心理的な支援やカウンセリングを行っています。もし私が精神科医のふりをして「私は精神科医です」と名乗ったり、「あなたは○○病です」などと診断を下したりすると法律違反になります。
しかし、心理の資格を全く持たない人が、「私はカウンセラーです」と名乗ったり、「○○療法によって心理的な落ち込みを改善していきます」などと心理的な支援やカウンセリングを行っても、全く何の問題もありません。
つまり、誰でも今この瞬間から「カウンセラー」と名乗ることができ、カウンセリングを行うことが法律的には可能なのです。
ところで、2019年に公認心理師が誕生しました。2015(平成27)年9月16日に公認心理師法が公布され、2017(平成29)年9月15日に施行されました。そして、2018年に第1回の試験が行われて、約3万人の国家資格である公認心理師が誕生したのです。
医師は業務独占という性質の資格です。資格を持たない者が医師と名乗ることも医療行為を行うことも法律によって禁止されています。公認心理師は、名称独占という性質の資格です。資格を持たない者が名乗ることは法律違反です。しかし、カウンセリングなどの心理的な支援を行うことは誰が行っても法律違反とはなりません。
つまり、公認心理師という国家資格が法律によって誕生しましたが、何の資格を持たないカウンセラーが、カウンセラーなどと名乗って、カウンセリングなどの心理的な支援を行うことは全く問題ないのです。
要するに、誰でもカウンセラーと名乗ることができて、誰でもカウンセラーになることができて、誰でもカウンセリングなどの心理的な支援を行うことができるのです。
無資格でも良いカウンセラーはいますか?
カウンセリングなどの相談では、『カウンセラーの人間性や人柄が大切で、資格を持っていないカウンセラーでも信頼できる人なら良いのではないか』と考える人も多いかもしれません。しかし、いくつかの点から、この考え方はお勧めいたしません。
カウンセリングでは知識と技能が大切です
カウンセリングでは、カウンセラーの人間性や人柄も大切ですが、それだけではなく知識と技能が大切です。心の健康や心理的な支援については、様々な研究が積み重ねられてきて、効果的な支援方法が明らかになってきました。
人間性や人柄が良くないカウンセラーであっても、知識と技能が一定以上あれば効果的なカウンセリングを行うことができると思われます。反対に、人間性や人柄だけでは、心理的な問題が複雑な場合には支援しようとしてもなかなか改善しなかったり、かえって問題を大きくしてしまう可能性があります。つまり、カウンセラーは、人間性や人柄だけではなく、知識と技能が大切なのです。
資格を持ったカウンセラーは、それぞれの資格が一定の知識と技能を保証しているわけです。資格を持たないカウンセラーの場合は、一定の知識と技能を持っているのかどうか判断がつきません。カウンセリングは健康や人生を左右するものです。しっかりとした資格を持ったカウンセラーを利用することをお勧めします。
なお、余談ですが、人間性や人柄と言われているものは、乳幼児期から成長してくる過程で身につけた自分や自分以外の存在(他者や環境)に関わっていくときの知識や技能だと私は思っています。
しっかりとした資格を取ることも責任の一環です
資格を持たないカウンセラーが、極めて高い知識と技能を持っていたとしても、それだけでは不十分で、カウンセラーとして活動するためにはしっかりとした資格を取るべきだと私は考えています。
カウンセラーという仕事は他人の心にかかわっていく仕事ですから、大きな責任がある仕事だと思います。社会的に認められている資格制度が存在しているわけですから、個人として知識と技能を高めるだけではなく、社会的な仕組みの中でその知識と技能を示していくことが求められると思います。資格を持たないままカウンセラーとして活動している人は、そういう責任を果たす必要があると私は考えています。
資格を取ることによって、その資格が求めている専門性を備えていることを示すことができます。それだけではなく、その資格によって職業上の責任や倫理を課せられます。資格を持たないということは、そういった資格制度による責任や倫理を果たさなくても良いということです。ルール違反や逸脱した活動をしても、それが許されるということです。
カウンセラーが本当に相談に来た人の利益や安全を重視している場合には、しっかりとした資格を取得しようと考えるはずです。資格を取得していないカウンセラーは、相談に来た人の利益や安全を軽視している可能性があります。
複数資格のカウンセラーをおすすめします
以上のことから、しっかりとした資格を持ったカウンセラーに相談することをお勧めします。しっかりした資格として私が個人的に考えている資格は、以下の6種類の資格です。
- 臨床心理士
- 学校心理士
- 臨床発達心理士
- 特別支援教育士
- 産業カウンセラー
- 公認心理師
上で書いたように、国家資格である公認心理師は2019年に有資格者が誕生しました。資格を持っていなかったカウンセラーも、これを機会に公認心理師を取得した人も多いと思います。
それを考えると、最低限度、公認心理師の資格を持ったカウンセラーを利用することをお勧めします。
私が、お勧めするのは公認心理師に加えて他の資格を持っているカウンセラーです。それには、理由があります。
知識と技能の観点から
第一には、知識や技能の広がりと深まりが複数資格のカウンセラーの方が優れていると考えられるからです。資格はそれぞれ異なる性格を持っています。複数の資格を持つということは、多面的に心理的な支援を行えることにつながります。人の心は多面的なものですから、カウンセラーが複数の資格を持っていることは意味があることだと考えられます。
倫理と責任の観点から
第二には、倫理や責任の観点からです。公認心理師は法律で定められた国家資格ですので、法律上の責任が定められています。それは重いものです。一方、法律というものは倫理やマナーよりも重大な逸脱や違反を対象としています。つまり、倫理違反やマナー違反は、法律には違反しないことも多いのです。
公認心理師という資格だけについて考えれば、明確に法律違反の行為でなければ、カウンセラーの責任を問うことは難しいと考えられます。
一方、公認心理師以外の臨床心理士などの資格は、それぞれの資格で倫理綱領などの守るべき倫理が決められています。それらの倫理は、法律よりも広範囲にわたっています。臨床心理士などの資格では倫理違反についてカウンセラーの責任を問うことができるのです。
つまり、公認心理師に加えて他の資格を持っているカウンセラーは、法律と倫理という2重の責任を課せられているのです。資格を持たないカウンセラーを利用する場合と資格を1つだけ持つカウンセラーを利用する場合に比べて、公認心理師と他の資格を持ったカウンセラーを利用する場合の方が、相談に来た人にとっての利益と安全がより大きくなることだと考えられます。
さらにいえば、都道府県の臨床心理士会や公認心理師会に所属したり、全国規模の臨床心理士会・公認心理師会に所属しているカウンセラーが安心です。倫理綱領は所属団体毎に定められていますので、資格を持っているだけで、団体に所属していない場合には、あまり、倫理綱領は関係ありません。カウンセラーを探すときには、所属団体にも注目すると良いと思います。
なお、「公認心理師の会」の倫理綱領はホームページ上に発見できませんでした(2021年3月30日)。
まとめ
- 公認心理師+臨床心理士
- 公認心理師+学校心理士
- 公認心理師+臨床発達心理士
- 公認心理師+特別支援教育士
- 公認心理師+産業カウンセラー
お勧めするのは、以上のようなダブル資格を持ったカウンセラーです。
そして、都道府県規模や全国規模の臨床心理士会・公認心理師会に所属しているカウンセラーがお勧めです。