この記事を読んでくださっている方は、もしかしたら、ご自分のお子様がいじめをしているということで悩んでおられるのかもしれません。親としては非常にショックなことだと思います。それにも関わらずこのブログ記事を検索して読んでくださっていることが意味ある素晴らしいことだと思います。
また、お子様がいじめとは無縁の方も読んでくださっていると思います。ご自分とは関係ないことと思わず、この記事を読んでくださることが、ご自身やご家族、そして社会にとっても、プラスの価値があることだと感じます。
いじめの加害は珍しいことではない
もし、お子様がいじめをしているという連絡が学校から来たとしたら、どんなふうに感じでしょうか? ほとんどの保護者の方は、大きなショックを受けるのではないかと思います。
しかし、現実問題として、いじめをしているということは決して珍しいことではありません。国立教育政策研究所の大規模な調査で確かめられています。小4から中3の6年間では、約4分の3の子どもが、複数回の(暴力を伴わない)いじめ行為をしています。なお、複数回のいじめを受けた子どもも約4分の3と同じ傾向です。
つまり、子どもたちが成長の途中でいじめをしてしまうということは決して珍しいことではないのです。
しかし、いじめをすることは良いことではありません。それをきっかけに、よりよく成長していけるようにサポートすることが、子どもにとってプラスになるのです。
いじめをする側への指導のポイント(学校)
いじめをする側への指導では、以下の4つのポイントがあります。
(1)事実関係の共通理解
(2)いじめ行為をしたときのその子ども自身の感情や考えの表現と理解
(3)いじめを受けた子どもの気持ちについての理解
(4)具体的な再発防止の方法
一般的には、学校での指導では、(1)【事実関係の共通理解】に重点が置かれています。周囲で見ていた子どもたちの情報なども使って、事実関係をしっかり押さえることがまず大切にされます。(3)【いじめを受けた子どもの気持ちについての理解】も一通り指導されます。先生から「○○された相手の子どもは、嫌な気持ちだったんだよ」「相手の子は本当に傷ついているんだよ」などと言われることがほとんどです。日本語としては意味が分かると思いますが、心からそう思えるように指導されているとは限りません。そういう点では、(3)についても学校の指導は不十分な場合が多いと思われます。
(4)【具体的な再発防止の方法】についての学校の指導も不十分な場合が多いと思われます。例えば、悪口を言ったといういじめ行為の場合、「悪口は言わない」ということを指導されて、本人も「悪口を言いません」などと約束している場合がほとんどです。再発防止を真剣に考えるならば、「悪口を言わない」というだけでは、極めて不十分です。どのような状況で悪口を言いたくなったのかを明確にし、その状況で、子ども本人がどのような感情や考えを持っていたのかを明らかにし、その感情や考えに子ども本人がどう対処するのかを具体的にすることが必要になります。つまり、上記の4つのポイントの(2)が重要なのです。しかし、一般的には学校では(2)も(4)も不十分な場合がほとんどです。
いじめの行為をしたお子様への対応のポイント
以上のように、学校の指導では、(2)と(4)が不十分な場合がほとんどです。ご家庭では、そこに重点的に関わっていくことが非常に大切だと思います。
気持ちや考えを理解する
まずは、いじめをしてしまった具体的な状況については、学校からの情報に基づいて、お子様と確認します。事実関係が確認できたら、その時の自分自身の気持ちについて思い出させて、振り返らせます。自分から話せる場合もあると思いますが、難しい場合がほとんどだと思います。「嫌な気持ちでいっぱいになったんだね」などと問いかけてみることが良いと思います。返事があれば、さらに具体的に「腹が立ったのかな?」とか「イライラしたのかな?」「悔しかったのかな?」などと問いかけてみることが大切です。そういう嫌な気持ちがどの場面で一番強くなったのかについても、確認できると良いと思います。イライラや悔しい気持ちなどについて、子どもからきちんと話してもらって、親は共感的にその話をよく聞くことができれば非常に良い対応だと思います。これが(2)の【いじめ行為をしたときのその子ども自身の感情や考えの表現と理解】になります。
嫌な気持ちへの対処について話し合う
自分自身がいじめをしてしまった時の気持ちがはっきりしたら、次は、どうしたら良かったのかについて話し合います。子どもからは、「悪口を言わない」などと、自分がしてしまったことを「しない」ということだけが出てくる場合がほとんどです。上述のようにそれでは不十分なので、具体的にどうすれば良かったのかについて話し合います。「イライラした気持ちになったときにどうしたらよかった?」などと投げかけます。子ども自身から「別の場所に行く」「別の友達と話す」など具体的な方法が出てきたら最高です。もし、出てこなかったら、そういった方法を提案してみることが良いと思います。また、感情を言葉として表現してみて、さらに、その気持ちを息と一緒に体から追い出すように何度か深呼吸をくりかえすという方法をお子様に提案することをおすすめします。「イライラしたんだよね。じゃあ、そういうときは、『イライラするなぁ』と小さい声で言ってみてから、そのイライラを口から息と一緒に吐き出すようにして、体の中から追い出すんだよ」と教えてあげます。そして、その場で2~3回練習します。これが、(4)の【具体的な再発防止の対策】になります。
いじめを受けた子どもの気持ちを想像する
以上のようなかかわりで、いじめ行為の背景となっていた嫌な気持ちはかなり解消され、少し気持ちに余裕ができたと思われます。お子様自身の気持ちに余裕ができたからこそ、相手の子どもの気持ちを想像したり理解したりすることができるようになります。
ここで、「相手の○○さんはどんな気持ちだったと思う?」などと、投げかけてみることをおすすめします。「嫌な気持ち」などと反応が返ってくると思います。もっと具体的に想像できるよう、事実関係を押さえながら「○○って言われたんでしょ、そう言われたらどんな気持ちになったと思う?」などと具体的に投げかけて考えさせます。「悲しかったと思う」とか「つらかったと思う」などと答えがあると良い流れです。お子様が自分なりに、相手の気持ちを考えることができたら、親自身がいじめを受けた体験を話して、その時の気持ちを伝えることも良いと思います。これが(3)【いじめを受けた子どもの気持ちについての理解】になります。
お子様との話し合いの最後に
以上のような流れで、一通り、話し合いができています。いじめ行為をしないで、人とうまく関わり合って学校生活を送れるようにサポートできたと思います。確認のために、嫌な気持ちがわいてきたときには、気持ちを言葉に出してから、その気持ちを深呼吸で体から追い出すことをもう一度お子様にお話ししてください。そして最後に、この話し合いで自分から自分の考えていることや気持ちを話したという点についてお子様をしっかりほめてあげてください。
いじめをしたことを叱ること
いじめ行為をしたことは厳しく叱るべきだとお考えの方も多いと思います。叱る“べき”かどうかは、この記事では触れていません。
この記事でお伝えしたことは、お子様がいじめ行為を繰り返さないために効果的だと考えられる対応方法です。実は、いじめ行為を叱ることは、いじめ行為を繰り返さないためには効果的だとは言えません。
いじめ行為の背景には不快な感情があります。叱られることによって、さらに不快な感情が増えてしまいます。お子様がいじめ行為を繰り返さないためには、学校の中で起きた不快な感情と家庭で叱られて生じた不快な感情の両方に上手に対処する必要が出てきます。
そのため、お子様は叱られる前よりも難しい状況に陥ってしまいます。そのため、叱るよりも、不快な感情に気づき、それを上手に処理していくことを身につけられるようにサポートしてあげることが大切だと考えられます。
その後の対応やお子様の変化に迷うとき
この記事の方法を試していただくと、良い変化が生じることが大半です。しかし【余計に状態が悪くなった】と感じられる場合があります。実は、カウンセラーの視点から考えると【状態が悪くなった】のではなく、良い変化が生じていることがほとんどです。でも、保護者様としてはご心配が大きくなることと思います。
そういった場合は、ぜひ、無料の初回相談をご利用ください。この記事の方法は一般的な方法です。それは一つの入り口です。入り口は同じでも、そこから先は、色々な道があります。リソースポートでは、保護者様と一緒にその道を進んで行きたいと思っております。 |
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国立教育政策研究所の研究については、以下のリンクからご参照ください。
https://www.nier.go.jp/shido/.../ijime_research-2010-2012.pdf