令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果が文部科学省より、2024年10月31日に出されています。
いじめの件数
それによれば、いじめの認知件数は、R2年度:517,163件、R3年度:615,351件、R4年度:681,948件、そしてR5年度は732,568件となっています。そのうち、小学校では588,930件、中学校では 122,703件、高校では17,611件で、小学校での件数が多くなっています。なお、児童生徒1000人当たりの件数は57.9件です。
いじめの認知件数が多いことは必ずしも悪いことではありません。学校が積極的にいじめを発見し、対応や支援を行うことが重要なのです。文部科学省もそういった主旨のコメントを何度も出しています。いじめは、ただの「いじめ件数」として捉えられているわけではなく、「いじめの認知件数」という捉え方になっています。いじめが生じているかもしれないという姿勢が基本にあって、そのうちで気づくことができた数を「いじめの認知件数」としているのです。
まずは、いじめを発見しようという姿勢が大切だということが言えます。
いじめ発見のきっかけ
いじめ発見のきっかけについても調査結果が報告されています。それによると、発見のきっかけとして一番多かったのが、「アンケート調査など学校の取組により発見」した場合で、全体の50.3%です。そして、「本人からの訴えにより発見」は19.4%、「保護者からの訴えにより発見」は12.8%となっています。
いじめの認知がある学校とない学校の違い
このように、多くのいじめが認知されているのですが、いじめの認知がない学校が5,548校あります。なお、いじめの認知がある学校は30,213校です。
いじめの認知がある学校とない学校で違いがあるかを調査結果から見てみます。
いじめアンケートの実施
いじめ認知のある学校 | いじめ認知のない学校 | |
アンケートを実施している | 99.3% | 86.1% |
アンケートの回数は1回 | 1.4% | 7.6% |
アンケートの回数は2~3回 | 54.8% | 55.0% |
アンケートの回数は4回以上 | 43.3% | 23.5% |
アンケートは記名式 | 79.3% | 53.9% |
アンケートは無記名式 | 22.3% | 27.2% |
アンケートの記名は選択式 |
10.4% | 11.2% |
アンケートは学校で記入 |
91.1% | 72.1% |
アンケートは持ち帰って記入 | 18.2% | 20.1% |
アンケート以外の方法の実施
いじめ認知のある学校 | いじめ認知のない学校 | |
個別面談の実施 | 86.2% | 69.0% |
生活ノートなどの実施 | 44.6% | 33.7% |
家庭訪問 | 42.4% | 27.7% |
その他 | 5.1% | 5.8% |
表を見ていただくとすぐにわかるのですが、いじめ認知のある学校ではアンケートの実施率が高く、実施回数も多い学校の割合が多いのです。また、記名式のアンケートの割合が多くなっています。記名式であれば、その結果から誰が書いたのかが分かるため、すぐに対応や支援を行うことができると考えられます。
また、いじめ認知のある学校では、個別面談や生活ノート、家庭訪問を実施している学校の割合が、いじめ認知のない学校よりも多くなっています。
いじめ認知のない学校はいじめのない学校ではない
こういった数字を見ていくと、「いじめの認知」のない学校は、「いじめ」のない学校ではないと分かります。
いじめ認知のない学校は、いじめの発見につながる可能性が最も高いアンケートをあまり実施しておらず、その他の方法もあまり実施していないのです。
つまり、いじめ発見に積極的ではないから、いじめの認知件数がないのだと考えられます。