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小中高校生の自殺者数について

ここ数年の児童生徒の自殺者数が高止まりとなっています。

 

 令和元年:399人

 令和2年:499人

 令和3年:473人

 令和4年:514人

 令和5年:513人

 

 

小中高校生の自殺者数年次推移(令和5年度確定値)子ども家庭庁の資料より

都道府県による子どもの自殺者数の違い

 

こういった状況で、各都道府県での児童生徒の自殺者数の違いも公表されています。

 

都道府県別の小中高校生の自殺者数(令和元年から令和5年の累計)子ども家庭庁の資料より

 

この数字は、都道府県ごとの5年分の累計です。ただ、もともとの子どもの人口の違いがあるため、単純には比較できません。そこで、各都道府県の子どもの人口を基準にして比較しやすいように、令和4年の5歳から19歳の子どもの人口10万人あたりの数となるように計算してみました。それが以下の表になります。また、横軸に子どもの人口をとって、縦軸に5年間の自殺者数をとったグラフも作成しました。

 

なお、いくつかの点で以下の数字の理解には注意してください。

まず、数字の集計は子どもの住所地の都道府県ごとではなく、自殺が行われた都道府県で集計されています。また、自殺者数は小中高校生の自殺者数ですが、それを令和4年の5~19歳の人口で割っていますので、厳密な自殺率ではありません。目安としてみてください。5年分の累計を人口で割っていますので、概ね5倍の値となっていると考えてください。 

 

都道府県名 5~19歳の
人口
自殺者数 5~19歳の
人口10万人
あたりの人数
合計 16204534 2398 14.80
北海道 607117 103 16.97
青森県 145493 18 12.37
岩手県 147097 25 17.00
宮城県 292772 44 15.03
秋田県 104077 14 13.45
山形県 131930 27 20.47
福島県 232177 40 17.23
茨城県 372908 53 14.21
栃木県 252290 57 22.59
群馬県 252055 32 12.70
埼玉県 943948 151 16.00
千葉県 798468 140 17.53
東京都 1605498 297 18.50
神奈川県 1169248 118 10.09
新潟県 270790 39 14.40
富山県 128260 12 9.36
石川県 149818 21 14.02
福井県 103602 15 14.48
山梨県 103773 23 22.16
長野県 269260 41 15.23
岐阜県 269383 40 14.85
静岡県 478421 72 15.05
愛知県 1039616 157 15.10
三重県 235320 37 15.72
滋賀県 207290 27 13.03
京都府 322594 34 10.54
大阪府 1115425 141 12.64
兵庫県 730066 124 16.98
奈良県 173583 38 21.89
和歌山県 115919 11 9.49
鳥取県 73387 3 4.09
島根県 87584 15 17.13
岡山県 252609 40 15.83
広島県 376730 55 14.60
山口県 168550 25 14.83
徳島県 88878 7 7.88
香川県 127023 15 11.81
愛媛県 171001 20 11.70
高知県 82969 15 18.08
福岡県 704186 97 13.77
佐賀県 115848 15 12.95
長崎県 175431 14 7.98
熊本県 241886 29 11.99
大分県 147012 16 10.88
宮崎県 149433 30 20.08
鹿児島県 222954 33 14.80
沖縄県 250671 18 7.18
各都道府県の5~19歳人口との対比による小中高校生の自殺者数(令和元年から令和5年の累計)

 

グラフを見るとわかりやすいのですが、東京都は子どもの人口に比べて、自殺者数が多くなっています。しかし、これは少し注意が必要です。この数字は自殺があった都道府県ごとでカウントされています。つまり、茨城県に住んでいる子どもが東京都内で自殺した場合も東京都での自殺者数にカウントされています。他の道府県に住んでいる子どもが東京都内で自殺している場合も数多くあるのではないかと考えられます。その数が含まれているため、東京は子どもの人口あたりで考えると数が多くなっていると思われます。逆に神奈川県は人口当たりの自殺者数が少なくなっていますが、東京での自殺者数に含まれている場合も多いと思われます。こういった分析は、もっと詳細なデータを持っている機関が正確に行っていると思います。ただ、東京に流入して自殺が行われているとすると、東京で子どもの危機的な状況に対して手厚く支援することは、意味が大きいと考えられます。

 

また、人口当たりの人数を見ると栃木県で最も大きな数字となっています。栃木県での子どもの自殺対策は極めて重要だと考えられます。また、山形県、山梨県、奈良県、宮崎県も高い数字となっているため、子どもの自殺対策は非常に重要だと思います。

 

都道府県別の5~19歳の自殺死亡率の推移

 

『令和6年版自殺対策白書』では、都道府県別の自殺死亡率の推移が報告されています。ここで報告されている数字は、子どもの住所地で集計したものになっています。

 

 

5~19歳の自殺死亡率の推移(令和6年版自殺対策白書より)

以下に、『令和6年版自殺対策白書』の説明を引用します。

 

令和元(2019)年から令和5(2023)年にかけての都道府県別のこども(5~19歳)の自殺死亡率について図表 2-4に示す。図表上段の9都道府県は、 令和元(2019)年から令和5(2023)年までの5年間の年間平均自殺者数が30人以上の都道府県である。5年間のこどもの自殺死亡率は、全国的には約1ポイントの上昇であったが、福岡県、北海道、千葉県、埼玉県、東京都、愛知県の6都道県では、1ポイ ント以上上昇しており、年次でみてもおおむね上昇傾向にある。また、この間の自殺死亡 率の上昇が1ポイント未満で、おおむね横ばいであったのは兵庫県、神奈川県の2県である。5年間で自殺死亡率が低下したのは大阪府であり、令和元(2019)年から令和4 (2022)年にかけて上昇し、令和5(2023)年に低下した。 令和元(2019)年から令和5(2023)年 までの5年間の年間平均自殺者数が10人以上30人未満の府県において、自殺死亡率が5年間で1ポイント以上上昇し、おおむね上昇傾向にあるものは、京都府や栃木県など7府県である。また、5年間の自殺死亡率の上昇が1ポイント未満で、おおむね横ばい傾向にあったのは宮城県、静岡県の2県、令和4(2022)年に一時上昇したのが奈良県、福島県の2県である。

 

こども・若者の自殺危機対応チーム

 

子どもの自殺防止のためのひとつの対応策として、【こども・若者の自殺危機対応チーム】の設置が進められています。多職種の専門家で構成される【こども・若者の自殺危機対応チーム】が、自殺の危機にある子どもや若者の支援について、間接的に支援を行う事業です。直接的な支援は、すでに子どもや若者にかかわっている支援者が継続して行います。その支援を危機対応チームが後方からサポートするという仕組みです。

国が令和5年度の補正予算から予算化していて、令和6年度の国の予算では各都道府県や政令市でチームを立ち上げるように予算が計上されています。都道府県や政令市などの各自治体では財政が厳しいところもあると思われますが、国がお金を出してチームの設置を推進しています。子ども家庭庁の資料を見ると令和7年度の国の予算でも予算化されるようです。

 

ただ、令和6年度ですでに国の予算が計上されているにもかかわらず、そのチームを設置した都道府県や政令市は極めて限られています(20自治体)。子どもの自殺が高止まりしている中、国がすでに予算化しているチームを立ち上げない理由が分かりません。

 

 

こども・若者の自殺危機対応チームについて(子ども家庭庁の資料より)
こども・若者の自殺危機対応チームの設置状況(子ども家庭庁の資料より)