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中学時代のトラウマから高校生になって不登校になる場合があります

 

中学生時代に不登校だった子どもたちも大半が高校に進学しています。中学校時代に色々と辛いなか頑張ってきた子どもたちも、高校では楽しく充実した日々を送っている場合も多いと思います。

 

反面、中学校時代の辛い経験がトラウマとなっていて、高校生活も辛くなってしまう場合もあります。

 

例として、中学校時代に先生からパワハラ(不適切指導)があった場合を考えます。先生からのパワハラは中学生の子どもにとっては理不尽なものですし、トラウマとなり中学校に行くことが難しくなってしまうのは無理もないことだと考えられます。

 

現実の問題と考えるだけでつらいという問題

 

図の左側のように、「現実的に危険や苦労が大きすぎる」場合、それに直面した時には恐怖や不安、辛い気持ちが生じるのは自然な反応です。しかも、それだけではなくく、自宅などの安心の場面でも色々と考えてしまって辛くなってしまうことがあります。

先生からパワハラがあった中学校の間は「現実的に危険や苦労が大きすぎる」という問題と「考えるだけでつらい」という問題の2つの問題が同時に生じていると言えます。まずは、現実的な問題(先生のパワハラ)がなくなるような現実的な解決策や対応策が必要です。

 

その先生とは会わないようにするなどの現実的な対策をとることによって、何とか(休みながらでも)学校に通うことができる場合もあります。

 

しかし、現実的な問題が解決できたとしても、辛い気持ちが続く場合があります。それは、図の右側のように「考えるだけでつらい」というトラウマの問題が続いているからです。

 

例えば、中学校を卒業して高校に進学した後も、「考えるだけでつらい」という問題が続いてしまい高校に通うことが難しくなってしまう場合があります。

 

高校には中学校の先生はいませんので、左側の「現実的に危険や苦労が大きすぎる」という問題はなくなっています。子ども自身もそのことは分かっているのに、「考えるだけでつらい」という問題が続いていて、学校に通うことに恐怖を感じてしまい、登校ができないのです。

 

このことは、以下の図のようなメカニズムで説明できます。 

トラウマが症状となるメカニズム(トラウマの症状化)

中学校の先生からのパワハラがトラウマ記憶となっています。高校に登校しようとすることがトリガーとなって、そのトラウマ記憶が活性化されます。それに伴って、不安や恐怖、「またパワハラに遭うに決まっている」「自分はどの先生からも嫌われるような存在だ」などと悲観的・否定的な考えが生じてくるのです。

 

トラウマで辛い状態から回復するには

 

トラウマによって辛い状態が生じている場合には、現実的な対応を行っても、なかなか辛い状態から回復できません。そういった対応では、上の図に示したメカニズムは変化せず、登校することや学校の教室などの避けられない物事がトリガーとなってしまうからです。

また、論理的に考えたり、自分で自分に言い聞かせたり、大人が説得したりしても辛い状態からはなかなか回復できません。やはり、上の図に示したメカニズムが変化しないからです。

 

回復するために大切なことは、まずは上の図に示したメカニズムを理解することです。そして、不安や恐怖への対処を練習しておくことです。ゆっくりと呼吸をしながら体をさすったり、タッピングをしたりします。いろいろな方法がありますので、自分がやりやすい方法をいくつか練習しておくことをお勧めします。いつでもどこでもすぐにできるように何度も練習しておくと良いと思います。(ページの一番下に対処法がまとめられている本を紹介しておきます。)

 

そして、不安や恐怖を感じたときには、それらがトリガーによって記憶が活性化されたために生じているのだと考えてみることが大切です。その上で、その不安や恐怖に対処します。練習したことを思い出してやってみます。

 

もし辛くなった時に、そばに信頼できる人がいる場合は、その人に「思い出して怖くなった。苦しい。助けてほしい。」などと、伝えてみましょう。傷ついた過去の場面では助けが得られなかった場合がほとんどだと思います。今苦しんでいる時に自分で助けを求められて、実際に助けてもらえることは、記憶による辛さから抜け出すことに役立ちます。

 

そして、不安や恐怖にある程度自分で対処できるという実感、人が助けてくれるという実感を持つことができると、不安や恐怖に振り回されにくくなり、さらに対処しやすくなります。

 

こういったことを繰り返し体験するうちに、少しずつ辛い状態から回復していくことができます。

 

トラウマケアのカウンセリングもお勧めです

 

トラウマのケアに特化したカウンセリングもお勧めです。色々な方法がありますが、リソースポートではEMDRを行うことができます。

 

この記事で書いたような高校生の場合は、まずは保護者様が初回相談をご利用ください。今までの経過や今の状況をお聞きして、ご本人様のカウンセリングが必要かどうか可能かどうかを検討します。

 

その上で、ご本人様がカウンセリングを利用してトラウマによる辛さから回復したいというご希望がある場合には、ご本人様に来談していただきます。そして、今までの経緯やご自身の希望をお聴きして、カウンセリングの実施について一緒に検討します。カウンセリング実施についてご本人様と合意ができましたら、次回以降、順を追ってEMDRなどのトラウマケアのカウンセリングを実施していきます。

※状況によってはEMDRを実施できない場合があります。その場合はカウンセリングの中でご説明します。

 

また、ご本人様のカウンセリングを何回か実施した後には保護者様との相談も実施させていただきます。

 

トラウマケアのカウンセリングにつきましては、以下のページもご参照ください。

 トラウマケアのカウンセリング

 

また、小学校の低学年でもトラウマから不登校になってしまう場合もあります。そのことについて以下のページで解説しました。

 不登校とトラウマ

 

お勧めの本(辛い感情への対処について)