カウンセリングを受けてみたいけど、本当に効果があるかどうか不安を感じる方が多いかもしれません。「ただの気休めではないか」などと心配になる気持ちは自然です。カウンセリングの効果をわかりやすく説明して、なぜ効果が得られるのか解説します。
カウンセリングとは
カウンセリングの効果について説明する前に、【カウンセリングとは何か?】について少しだけ解説します。
カウンセリングとは、相談に来た人(クライエント)が、相談を受ける人(カウンセラー)との対話を通して、今、自分自身が悩んでいることや困っていることについて考えていくことです。
カウンセリングでは、カウンセラーが解決策をアドバイスするのではなく、カウンセラーは心理的に安全な場を提供します。クライエントは、その場の中で必要に応じて自分自身の心を見つめていくのです。そのプロセスが、適切に進むと自分自身の成長につながっていきます。そして、自分の求める方向性が見つかり、その方向に進んでいく具体的な方法が見えてくるのです。
こういった良い効果がカウンセリングでは期待されるのですが、その効果について詳しく見ていきます。
カウンセリングの効果
実際、カウンセリングの効果は様々な面で現れます。自分自身が全く別人のように変わるわけではありませんが、様々な面で少しずつ効果が現れて来ることが多いと思います。
第一に言えることは、自分自身についてより深く理解できるようになるということです。また、辛さや苦しさが小さくなり、感情に上手く対処できるようになります。考え方に柔軟性が生まれ、マイナスの感情が小さくなります。そして、行動の幅が広がり、対応力が高まります。
こんなふうに良い変化が生じることで、自分自身を自分で肯定的に捉えられるようになったり、対人関係が今よりも快適になったり、今までよりも未来に希望が持てるようになったりします。
カウンセリングは気休めでも同情でもありません
一般的には、カウンセリングは、気休めだとか、優しい言葉を掛けてくれるとか、同情してくれるなどと考えられているようです。実は、これは誤解なのです。カウンセリングのプロセスを通して、心の中で本質的な変化が生じることで、効果が生まれてくると考えられます。
そもそも、人間には自己治癒力があり、それを助けることがカウンセリングのなかで一番大切なことです。人(カウンセラー)に自分の体験や考えを話すことによって、心の中にある自己治癒力が引き出されて、カウンセリングの効果が生まれてきます。
カウンセリングはなぜ効果があるか?
その効果を【感情が処理される】、【思考が整理される】、【記憶が処理される】という3つの側面から考えていきます。
例えば、摂食障害という症状があるとします。「痩せていなくていけない」などという思考があって、食事を取ることに「不安」といった感情が生じてきて、食べたくても食べられないという状態になるのです。また、過去に何からかの辛い体験の「記憶」があって、食べようとすると不安になるなどの感情に繋がっていることもあります。また、不登校の子どもたちは、学校へ行くことに「不安」などのマイナスの感情を感じているにもかかわらず、「学校に行かなければならない」などという思考があって、余計に「辛さや」「苦しさ」などの感情が生じてしまうと考えられます。その背景には、過去に学校でつらい体験をした「記憶」があることも多いと思われます。
こういったことから、カウンセリングでは、【感情が処理される】、【思考が整理される】、【記憶が処理される】という3つの機能が大切なのです。
感情が処理される:効果その1
辛いことがあったり、悲しいことがあったりしたときにそれを心の内側に閉じ込めておくと、心に負担がかかり続けてしまい、心の問題や不調に陥ってしまう可能性があります。
反対に話をするだけで、気持ちがすっきりするということもあります。そのことを少し考えてみます。
話すだけで心がすっきりする
嫌な出来事について話をよく聴いてもらうと、心がすっきりするという体験をしたことがある人は多いと思います。辛い気持ちは心の中に閉じ込めておくのではなく、誰かに話す方が良いのです。
話をすると感情がなくなるわけではないのですが、その感情の持つ生々しさやインパクトが減少するのです。気持ちが「消える」わけではなく、気持ちが「おさまる」のです。
ところで、感情は、一種の生理的な反応です。つまり、脳の中にある、それぞれの感情に関わる神経回路の興奮という捉え方ができます。辛い気持ちについて話すということは、その神経回路の興奮を言語中枢まで伝えて、言語処理をする回路の中で神経回路の興奮を処理することだと捉えられます。そして、処理されることによって神経回路の興奮が収まってくるのです。
カウンセラーは感情に共感できるように話を聴く
このような【話すことを通して感情が処理される】ということは、通常の人間関係の中で話したり話を聴いたりするなかで、自然に生じている心の働きです。しかし、話している時に、受け入れてもらえなかったり、意見をされたり、否定されたりすると、さらに心に負担がかかってしまいます。
カウンセリングでは、話を聴くときに、新たな心の負担が生じないように、カウンセラーは丁寧に話を聴いていきます。良い悪いや、正しい正しくないという視点ではなく、その人はそういう感情体験をしたのだと捉えつつ、感情に共感できるように話を聴いていきます。
その中で自然と不快な感情が処理されて、元々の感情の持つ生々しさインパクトが小さくなります。
思考が整理される:効果その2
人は何らかの問題に直面したときには、色々と考えたり迷ったりたりするものです。なかなか問題が解消しないときには、考え続けていても、いつの間にか堂々巡りになって同じことを考え続けていることもあります。結論が出ないまま、「あーでもない、こーでもない」と悩み続けてしまうこともあります。
反対に、話すだけで考えがまとまることがあります。そのことを少し考えてみます。
人には考え方の癖や思考の盲点がある
実は、人にはそれぞれ、考え方の癖や思考の盲点があるものです。ちょっとしたことを大きく捉えたり、反対に、重要なことを考えに入れなかったりすることがあります。さらには、一つのことを考え続けていると、脳が疲れてきて、知らず知らずのうちに思考の広がりや柔軟性が失われてしまうことも知られています。
こういったことが背景となって、悩みの中にあるときには、思考が悪循環になってどんどん悩みが深くなってしまいがちです。
人は話すときに、相手に合わせて話をする
ところで、人が人に話をするときには、誰でも多かれ少なかれ相手に理解されやすいように説明を加えたり、相手にとって分かりやすく話したりするものです。このプロセスそのものが、相手の考え方や相手の視点を取り入れて話をすることにつながっています。
つまり、自分の中だけで考えていた場合とは異なったプロセスで考えて話すことになるのです。
つまり、人に分かってもらおうと話すだけで、自分の考え方の癖や思考の盲点を知らず知らずのうちに避けて話すことにつながります。そのため、人に話すだけで、自然に良い考えが浮かんだり、考えがまとまったりするのです。
カウンセラーは考え方を理解しようとして聴く
このような【話すことを通して思考が整理される】ということは、通常の人間関係の中で話したり話を聴いたりするなかで、自然に生じている心の働きです。
しかし、相手が話を聴いてくれるのではなく、こちらの考え方に反論してくる場合があります。考え方に反論されると、自分の考え方に固執しやすくなりがちです。そうなると、もともとある考え方の癖や思考の盲点が心がうまく働くことを余計に邪魔してしまいます。また、相手が自分なりのアドバイスや考え方を話してくることもあります。しかし、自分自身にとって必要な情報や考え方ではない場合には、それによって思考が混乱してしまいがちです。
カウンセリングでは、こういったことが生じないようにカウンセラーは丁寧に話を聴いていきます。話している人の考え方を理解することを重視して話を聴くのです。それだけで、自然と思考が整理されてきます。
ところで、認知行動療法というカウンセリングの手法があります。認知行動療法では様々な側面から心にアプローチしますが、特に思考や考え方に働きかけるアプローチも豊富です。認知行動療法のアプローチは、このような【話すことを通して思考が整理される】ということを、理論的・体系的に活用した方法だと考えられます。
記憶が処理される:効果その3
【記憶が処理される】というカウンセリングの効果について考えていきます。その前に、記憶が心理的な問題や障害とどのように関連しているか説明します。
否定的な感情体験についての記憶
人は、様々な体験をして成長していきます。その体験の中には、つらさ、悲しさ、寂しさといった否定的な感情が非常に大きいような体験もあることと思います。そういう体験は、思い出すだけで、否定的な感情が押し寄せてきてしまいます。
そのため、毎日の日常生活の中では、自然と思い出さないようになっています。自分を守るため、心の中にそういう思い出さない仕組みがあるのです。ある意味、そういった記憶は、封じ込められた記憶になっているのです。冷凍保存されているという言い方をされることもあります。
しかし、心の中に封じ込められている記憶があると心が自由に動くことが難しくなりがちです。例えば、心を一つの家だと想像してみてください。封じ込められた記憶はその家の中(例えば地下室の中の一室)に開かずの扉があるようなものです。
その扉を開けなければ、中の記憶が出てくることはないので安心です。しかし、時間がたつうちに、扉を見るだけで中の記憶を少しだけ思い出すので、その記憶を避けるために、地下室へ行っても、その扉に近づかなかったり、その扉の方向を見ないようにしたりするようになることがあります。その記憶そのものではなく、記憶を封じこめている扉を避けるようになります。
さらには、扉だけはなく、地下室に行くことを避けるようになります。さらには、地下室へ行く階段を避けるようになり、階段が見える場所を避けるようになってしまうかもしれません。そうすると、毎日の生活が色々な面で上手く進まなくなってしまいます。こういった状態が、様々な心理的な問題や障害に陥っている状態です。
話すことは記憶と感情をよみがえらせる
ところで、おしゃべりをしていると、自然に色々な記憶がよみがえってくるという体験をしたことがあるのではないかと思います。例えば、小さな頃の一つのエピソードについて話していると、普段は思い出さないのエピソードのことが思い出されてくることがあります。思い出したことを話していくと、さらに芋づる式に記憶がよみがえってくることがあると思います。
こんなふうに、人と話をしていると、過去の記憶がよみがえってくるものです。そしてただ単に思い出すだけではなく、話をすることで、その記憶とつながっている感情もよみがえってきます。例えば、話している内に感極まって、泣き出してしまうような状態をテレビなどで見ることもあります。
過去の否定的な感情体験のインパクトが減少する
不思議なことですが、思い出して話をすることによって、否定的な感情体験の記憶のインパクトが減少することが知られています。冷凍保存された記憶が解凍されて、表に出てくることによって、少しずつ風化していくのだと言われています。
脳の中で、アクセスされて来なかった記憶に少しずつアクセスしていくことを通して脳の中で処理が進んでいくのです。処理が進めば、そのインパクトが減少していくのです。
開かずの扉を開けるまで行かなくても、扉を開けなければ大丈夫、扉を見るぐらいは大丈夫、というように感じられるようになります。
カウンセラーは安全に記憶の処理を進めていきます
しかし、過去の否定的な感情体験の記憶にアクセスすることは非常に辛い場合があります。辛すぎる場合は、その記憶に近づくことをさらに避けてしまう状況を助長します。そうすると、心の不自由さが助長されてしまいます。心理的な問題や症状が悪化してしまうのです。
こういったことがあるため、カウンセラーが過去の否定的な感情体験の記憶にむやみに近づくようなことはありません。安心・安全な環境や関係を作ることをまず大切にします。
そして、安心・安全な範囲で過去の否定的な記憶に近づくようにしていきます。安心・安全の中で、否定的な記憶に近づいていくため、その記憶の否定的なインパクトが減少していくのです。
ところで、EMDRという手法があります。過去の否定的な感情体験の記憶を処理していくことについて、脳の機能や特徴を活かしてアプローチしていく厳密な手続きが定められた手法です。一般的なコミュニケーションの中で生じることを、安全に、かつ効果的に進めていくための手法だと考えられます。
この記事は、半田一郎(公認心理師、臨床心理士、学校心理士スーパーバイザー)が作成しました。
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公認心理師や臨床心理士、学校心理士、臨床発達心理師など様々な資格を持ったカウンセラーがいます。また、そういった資格を持たない心理カウンセラーも活動しています。カウンセラーを選ぶときにどんな資格をもったカウンセラーが良いか解説しました。