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開業カウンセラーとしてどう対応すれば良いかについて考えてみた

 

あるオンラインカウンセリング会社代表のTwitterでの発言によって、様々な反応が生じています。

 

私は、断片的な情報しか把握していない可能性が高いと思いますが、今回の事案で、自分なりに学び考えたことをまとめておきたいと思います。

 

どう考えれば良いか

 

広く今後に役立てるために、また、特定の個人や個人の行動を批判・非難する意図ではないため、あえて一般化して考えていきたいと思います。

 

今回の事案は、以下のようにとらえることができます。

あるカウンセリングを提供する会社と関わりのある人が、他者の心身に被害を与える行為を行ったのですが、その会社の代表が被害を受けた人にさらなるダメージを与えるような発言をインターネット上で行ったという事案だと捉えます。

 

もちろん、他者の心身に被害を与える行為そのものは、許されないことです。被害を受けた方が、勇気を持って発言したことには敬意を表します。また、発言する際に勇気を持たざるを得ない社会には問題を強く感じます。それは変えていかなければならないと考えております。また、声を上げた人の意見を封殺するような行為、封殺につながるような行為も許されない行為であることも記しておきます。

 

今回の記事では、もともとの事件そのものではなく、カウンセリングを提供している会社の代表の発言に、開業カウンセリングルームの代表としてどのように対応したら良いかについて考えたことをまとめます。判断の基準となることは、利用者(クライエント)の利益です。

 

十分な内容ではないと思いますが、今の段階での考えをまとめて公開しておくことも、何らかの役に立つのではないかと考え、公開することとしました。

 

カウンセリングの枠組みについて

まず、提供されていたカウンセリングの枠組みについて考えてみます。以下のような図として整理することができます。

 

提供されていたカウンセリングの枠組み

 

大切なことは、代表はカウンセラーではなく会社の運営を行っており、提供されているカウンセリングそのものは、契約関係にある専門家が業務委託を受けて行っていたということです。つまり、代表やその会社そのものと、提供されていたカウンセリングは、ある程度区別してとらえることができ、カウンセリングそのものは、カウンセリングの枠組みの中である程度の質が保たれていた(保たれている)と考えられることです。

 

 

開業カウンセラーとしての対応について

今回の件では、その会社や代表と私や私のカウンセリングルームは全くかかわりがありませんでした。もし、その会社や代表と私や私のカウンセリングルームが、カウンセリングの活動に関連してかかわりがあった場合には、どのように対応したらよいかを考えてみます。かかわりがあったというのは、例えば、自分のカウンセリングルームのホームページの記事中で、その会社のカウンセリングを紹介していたり、その会社へのリンクを行っていた場合です。また、逆にその会社のブログなどに記事を寄稿していたり、その会社主催の講座を過去に担当していたり、これから担当する予定になっている場合もあると思います。このような場合に、どう対応すればよいのかを考えます。

 

最初の段階での対応について

まず、インターネットのSNSなどの情報からこの事案を知ることになった段階で、ある程度の情報収集をしなければならないと思います。そのうえで、知りえた情報をまとめ、その情報に基づいて、自分自身の態度や見解をある程度まとめる必要があると思います。ここまでは個人的に行うことです。そのうえで、その会社の代表に、メールなどの方法で個人的に問い合わせを行うことが大切だと思います。TwitterなどのSNSで、疑問や見解を出すことはまだ控えるべきだと思います。それは、その会社のカウンセリングを利用している方に不安をあたえる可能性があるからです。

 

もし、何らかの見解を出すとしたら自分のカウンセリングルームのホームページにとどめておくことが大切だと私は考えています。私のカウンセリングルームを利用している方が、同様の情報に触れていて、何らかの不安や不信を感じておられるかもしれません。私は、まず、その不安や不信に応えるべきだと思います。だからこそ、自分のカウンセリングルームのホームページの記事で、現在の対応について報告すべきだと思います。その報告内容は、以下のような内容が良いのではないかと考えています。

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ブログ記事(〇年〇月〇日に公開)で紹介した○○というカウンセリング会社について、インターネット上で気になる情報を見かけました。そこで、その会社の代表の方に事実関係やお考えについて〇月〇日に問い合わせをいたしました。そのお返事を待って、今後の対応を考えていきたいと考えております。方針が定まるまでの間は、こちらからの紹介記事は一時的に非公開としてリンクも飛ばないようにいたしました。なお、私共のカウンセリングをご利用くださっている皆様の中で、この件に関しまして、気になることやご質問がございましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。

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この記事に関しては、ツイッターなどのSNSではシェアしません。こちらのカウンセリングルームの利用者の方の利益を大切にするための記事で、拡散させることが目的ではないからです。

 

正式な対応について

その会社の代表へのメールでは、知りえた情報のソースを明示し、それについての自分自身の見解や今後の対応についてまとめた文書を日付と署名入りのPDFで送ります。それへの返答を待って、自分のホームページで、自分自身の見解と対応を記事として公開します。これが、(この段階での)正式な対応となります。

 

この記事は、ツイッターなどのSNSでシェアしても良いと思います。その際には、「○○社の○○という件について、こちらで把握した事実関係と、それについての見解と対応をホームページに掲載しました」などと中立的な文面を書いて記事へのリンクをシェアするのが良いのではないかと思います。SNSに見解と対応の内容を書くことは慎重にしなければならないと思います。SNSでは、情報が拡散され、いきさつや事情を知らない人や全く関係のない人の目に触れるため、不安や不信を増幅させてしまう危険性があります。ホームページの記事にしっかりと書いて、それを読んでもらうことが大切だと思います。

 

また、その会社のホームページなどに記事を寄稿した場合、その記事の削除を求めることはあり得ることだと思います。ただ、記事が削除されてしまうと、全く何もなかったようになるため、利用者の皆様にとっては、こちらの不都合な情報にアクセスできないようにしたということになります。そのため、そのいきさつを自分のホームページの記事に書いておくことが良いのではないかと思います。例えば、以下のような内容になります。

「○年○月○日に、○○社のホームページに○○について記事を寄稿しましたが、今回の件があり、こちらからの申し出によって○年○月○日にその記事は削除されました。」

 

なお、その会社のカウンセリングを利用している方に、こちらや他の機関の利用を促すような誘導は行ってはならないと思われます。その会社の利用者の方は、思わぬ事態に遭遇して心理的に動揺している可能性が高いと考えられます。そういった状況にある人を誘導して自分の利益を図ることは、非倫理的な行為だと考えられます。

 

なお、誘導する意図がなくても、誘導してしまうこともあると思われるため、注意が必要だと考えられます。その会社の持っていない特徴を強調したうえで、自分たちのサービスを勧めることは、誘導していることになるかもしれません。「カウンセラーが一人で運営している会社の方が安心ですね。私たちのカウンセリングをご利用ください。」などという表現は、誘導にあたるかもしれません。なお、こういったことについては、さらに考えていかなければならないと思います。

 

利用しているカウンセラーとの間で、他機関を利用するかどうかが話し合われることが一番大切だと思います。それにつながるような情報発信が大切ではないかと思います。

 

なお、リソースポートのツイッターでは、以下のようなツイートを1度だけ行いました。

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今回の事案の会社(実際は会社名を書いています。)が「ご不安・ご懸念をお持ちの方へ」として、返金・退会の手数料の無料化や他機関のカウンセリングの案内・相談先の紹介をしているようですね。

#臨床心理士 限定ですが、「臨床心理士に出会うには」というサイトから #カウンセラー を探すことができます。

http://jsccp.jp/near/

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今後の利用についてカウンセラーと話し合うことをお勧めすればよかったと思っておりますが、その時点では気づきませんでした。なお、リソースポートは、「臨床心理士に出会うには」には登録しておりません(2021年5月17日)。

 

利用者の皆様に向けて会社の取るべき対応

 

この記事の趣旨とは異なるのですが、その会社がとるべき対応について考えてみました。

 

今回の件では、その会社は所属カウンセラーに対して、情報提供を行い方針を伝えなければならないと思います。所属カウンセラーには、会社からできるだけ早く事実関係を伝えることが求められます。そして、そのカウンセラーを利用している人とのカウンセリングの中で、利用者には事実関係や他機関のカウンセリングを利用してもよいことを伝えて、このカウンセリングの利用を続けるかどうかを検討し、必要に応じて他機関を勧めるように、会社から所属カウンセラーに促すべきです。なお、こういった話し合いが行われたカウンセリングについては、利用料金は無料にするべきです。カウンセリングを受けることに迷いや不安が生じてくるため、1回のカウンセリングでこの検討や話し合いが終わるとは限りません。続けるにしても続けないにしても、利用者様が納得のいくまで、このカウンセリングは利用者の負担は無料で続けられるべきです。また、カウンセラーへの報酬についても、通常通りに支払われる必要があると思います。

  

利用者の皆様に向けては、一斉メールなどを利用して、上記と同様の内容を伝えることが必要です。他機関の利用については、会社の問い合わせ窓口を設けることは必要ですが、そこへ誘導するのではなく、今利用しているカウンセラーと話し合うように求めることが良いと思います。上記のように、提供されているカウンセリングは代表や会社とはある程度切り離して考えることができるため、利用者の利益を優先して話し合うことができるのではないかと思います。