自己肯定感とは、自分自身のことを自分で価値ある存在だと感じられ、自分自身の在り方を肯定的に評価できるという感覚です(英語では、self-esteem)。
自尊心、自己存在感、自己効力感(self-efficacy)と重なる部分が大きいのですが、実生活上は厳密な区別は必要ないと思われます。
自己肯定感は、他人と比較して自分が優れていると捉えることとは違い、自分自身で自分なりに自分を肯定的に捉えている感覚です。そのため、自己肯定感が高い人は、他人のことも肯定的に捉えて他人も尊重することができるのです。
日本の若者は自己肯定感が低い
日本の若者は自己肯定感が低いと言われています。例えば、『高校生の生活と意識に関する調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較-』(2015年8月)という調査結果では、4カ国の高校生の中で、日本の高校生の自己肯定感が一番低いという結果が得られています。
自己肯定感に関連する質問項目をピックアップして、グラフにしてみました。自分のことを肯定的に捉えているかどうかを質問している項目では、肯定的に捉えられている高校生の割合が4カ国なかで一番低くなっています。反対に、自分のことをダメだと思うかどうかという項目では、一番高い割合になっています。
自己肯定感が低くなる!やりがちな【ほめ方】
多くの保護者様は、お子様が心身共に健康に育ってほしいと思い、お子様をほめて育てようとされていると思います。一般的には、ほめて育てることが自己肯定感につながっていると思われています。しかし、ほめて育てることには、落とし穴があります。それは、「条件付きでほめる」「成果をほめる」というほめ方です。
条件付きでほめるのは逆効果
【条件付きでほめる】というのは、お子様が頑張ったときや、良い行動をしたときにほめるというほめ方です。「良い行動をした」という条件を満たしたときにほめることです。
ご家庭ではこういったことは、非常に良くあるのではないかと思います。【野菜嫌いのお子様がブロコッリーを一房食べた】、【自分からお手伝いで食器を洗った】など、良い行動をしたり頑張ったりしたときには、しっかりとほめている方が多いと思います。
しかし、こういったほめ方は、【条件付き】のほめ方です。「頑張った」「良い行動をした」という条件が満たされたときだけほめられるという感覚がお子様の心の中で大きくなってしまいます。
お子様は、条件が満たされていない時の自分はダメで、条件が満たされたときの自分だけが認められていると感じてしまいがちです。つまり、基本の自分はダメで特別な場合だけ自分はよい子だという感じてしまうのです。良いことをしたときに、一生懸命ほめることが逆効果につながってしまうのです。
成果をほめるのは逆効果
【成果をほめる】というのは、良い結果が得られたときに、その良い結果に注目してお子様をほめることです。
子育ての中では、こういったことは非常に良くあると思います。【学校のテストで良い点数をとれた】【お子様が習い事の大会やコンクールで表彰された】など、良い結果が得られたときには、しっかりとほめている方が多いと思います。
しかし、こういったほめ方は、【成果をほめる】ほめ方です。自分自身ではなく、「点数」や「成果」が価値あるものだという感覚が、お子様の心の中で大きくなってしまいます。
一生懸命に成果をほめると、逆効果になってしまいがちなのです。
自己肯定感を育てるには
自己肯定感というのは、自分自身で自分を肯定的に捉えられるという感覚です。自分自身が価値ある存在だと感じられることが大切なのです。成果や結果に価値があるのではなく、また、頑張ったことに価値があるのではなく、自分自身に価値を見いだせるということです。自分の頑張ったプロセスに注目してほめてあげることが、自己肯定感につながります。
プロセスに注目してほめる
そのための一つのポイントは、結果ではなくプロセスに注目してほめることです。
例えば【学校のテストで良い点数をとれた】ときには、点数ではなく、「テスト勉強を頑張ったてたのが素晴らしいね」とほめます。成果ではなく、努力に注目してほめています。努力はお子様自身の行動です。お子様の存在自体を大切に思っていることが伝わってきます。
本人が自分で評価しているプロセスをほめる
また、大人から見て気づいたプロセスをほめるのではなく、本人が自分で評価しているプロセスをほめることも良い方法です。例えば、【学校のテストで良い点数をとれた】ときに、「どんなところ頑張った?」と聞いてあげて、本人が答えたことにそってほめてあげるのです。もし、本人が「昨日の夜に間違った問題を解き直した」と答えたのであれば、「自分でそういう努力をしたのが素晴らしいね」とほめてあげるのです。
一緒に喜ぶ
また、「テスト勉強を頑張ってたのが、きちんと成果にあらわれてお母さんはうれしいなぁ」とほめることも、一つです。成果そのものではなく、努力が成果につながったという、お子様自身にとって、良いことが起きたということを一緒に喜ぶことが大切です。お子様の存在自体を大切にしていることが伝わってきます。
例えば、【野菜嫌いのお子様が、頑張ってブロコッリーを一房食べた】時には、「ブロッコリーを頑張って食べたのが偉いねぇ」というほめ方ではなく、「お野菜を食べると体が丈夫になるからお母さんはうれしいなぁ」とほめるのです。お子様が健康になることがうれしい、つまり、お子様の存在自体が大切だと伝わっていきます。
まとめ
日本の子どもたちは自己肯定感が低いと言われています。プロセスをほめたり、自分で評価しているプロセスをほめてあげる、一緒に喜ぶというほめ方が、自己肯定感を高めていくために効果があります。
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