NHKのニュースで事件の被害者に関する報道について考えさせられる特集がありました。「News Up「被害者A」と呼ばないで」という特集です。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171201/k10011243651000.html
被害者のご家族は、事件の後になされた報道で、被害者本人の名前や顔写真が報道されたということに、大変ショックを受けたということです。しかし、裁判では匿名での審理を行うのではなく、本人の実名で審理を進めていくことをご家族は望んだと言うことです。被害者には何の落ち度がないにもかかわらず、かけがえのない人生を奪われてしまったことが十分に伝わらないのではないかと考えたということです。裁判は裁判員裁判で、実名での審理が行われたとのことです。裁判後に裁判員からは、匿名での審理ではなく実名だからこそ亡くなったという重みがより強く伝わったとの感想があったということです。
そして、被害者のご家族が、今回のNHKの取材に実名で応じている理由も紹介されています。犯罪の被害者の遺族がどうすれば良いか悩んだときに、名前を手がかりに自分たちに声をかけてほしいと考えたということです。
この特集ニュースを見て改めて思いましたが、事件の直後には被害者は原則匿名で報道することが自然なことだと思いました。そして、その後の報道では、被害者本人や遺族の考えに丁寧に寄り添いながら、実名報道を含めて、事実関係から被害者やご家族の心の動きまで、丁寧に報道することが必要だと思います。
報道を見ていると、事実を報道することは正しいことだという姿勢があるように思います。しかも、事実を非常に表面的に捉えていると感じます。もちろん被害者お名前や顔は、事実関係です。しかし、事件の事実関係の中で伝えるべき事実はもっと別の所にあるように思います。事件直後の限られたニュースの時間枠の中で、どの事実を伝えることが重要なのかは常に深く考えるべきことだと思います。被害者の名前や顔写真は、伝えるべき事実関係の中では優先順位はかなり低い方ではないでしょうか? それらを伝えることが何となくリアルで生々しいニュースになるため、漫然と顔写真や名前を報道することが続けられているように思います。報道がセンセーショナルに行われることが非常に多いように感じます。リアルさや生々しさ、犯罪の深刻さは、その後に被害者や家族に丁寧に取材することを通して伝えていくことが大切ではないかと思います。
この事件で犯人の青木正裕被告に殺害された被害者は岩瀬加奈さんとのことです。ご両親は、岩瀬正史さんと裕見子さんとのことです。NHKのニュースに触れて、私には、ご両親の思いが生々しく伝わってきたように感じました。できるだけたくさんの人が、webでニュースを読んで、ご両親の思いを感じ取っていただきたいと思いました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171201/k10011243651000.html